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藤宮史の二番煎じなアートな気分

手軽で笑える現代美術的なことをやって、不定期に掲載します。

第16回 告白アート(別バージョン)

                 はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

              ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 昭和30〜40年代のころは、よくローセキをつかって路面に落書きをする子供たちの、元気に遊ぶ姿がみられたものであった。今の、平成の世となってからは殆んど見かけなくなった。その古き良き時代への哀惜の念をこめて、齢五十一となった身の上なれど、愚直に、真摯に落書きを実行してゆきたい。

 告白アートと名づけてみたが、告白と云うには、それほど深刻ではなく、軽く、楽しく、滑稽感がでればと思う。(前回は告白であったが、今回は別バージョンとして、もはや告白の範疇でないものもやってゆきたい) 今回もローセキやチョークなどを使わずに、厚めのボール紙でつくったステンシル版を黒土の上に置き、その上から砂糖を降り注ぐことで文字を書いてゆきたい。このステンシル版使用の落書き方法は、ローセキやチョークで直接路面に書くのとちがい、瞬時に明朝体や角ゴシック体、草書、隷書が書けてしまう。

 ■告白アートを、実際につくってみる

 春になったが、相変わらず炬燵に足を入れ、ぽつりぽつりとステンシル版を切り出してゆく・・・・・・と、言っても、それほど簡単にことは済まない。まず、パソコンでワードを開き、落書きする文字を打ってゆく。その文字を大きくしてプリンターで印刷。文字を印刷した紙を厚ボール紙の上に置き、小さく切ったセロテープで二か所を固定。印刷した紙と厚ボール紙の間にカーボン紙をはさみ、文字を印刷した紙の文字をボールペンでなぞって書く。すると厚ボール紙に文字が転写される・・・・・・・・と書いてゆくと際限がないが、とにかく、ステンシル版を切りだしてゆく。

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厚ボール紙はシナベニヤ板のように硬く文字の切り出しは容易ではない。

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▲字画が多くて、文字を切り出すのに難渋する。これは木版画の製版とほとんど同じだけの仕事量である。

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▲今回は、砂糖を用意する。小さい金笊と茶漉しを使って砂糖をステンシル版の上に撒く。

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▲あらかじめ庭の地面を整地しておく。

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▲地面にステンシル版を置き、

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▲砂糖を撒く。

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▲地面の上に砂糖が撒かれた状態である。

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▲あとは砂糖に蟻が来るのを待つ。

 

・・・が、蟻は、なかなか来ない。

大挙して黒山の如く押し寄せるはずであるが、来ない。

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▲1ミリほどの小さな蟻が、肉眼では確認できるが、画像ではわかりにくい。

砂糖を、砂糖パウダーではなく、グラニュウ糖にしたのがいけなかったようだ。

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▲2、3の蟻の姿は確認できるが、ほとんど砂糖には関心を示していない。

 

「蟻がくる」のはずであったが、蟻は来なかった。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。木版漫画集「黒猫堂商店の一夜」(青林工藝舎)を刊行。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

第15回 与太記事スクラップ②

                 はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

        ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回のアートは、新聞記事を模した記事を印刷してみようと思う。しかも記事の内容は架空の、超常現象のような、ちょっと他では見かけない物にして遊んでみたい。(ゆくゆくはスクラップブック一杯に与太記事を貼りつけてみたい) 以前、藤宮新聞をやって取材範囲が狭くて頓挫しているので、今回は大上段に構えずに、幅広い取材対象にして単発で記事を作ってゆきたいと思う。

 ■実際につくってみる

 前回の続きである。今回は取材範囲をさらに拡大してゆきたい。

 クローン人間ものの記事を用意したが、実在した有名俳優、歌手などで差しさわりがありそうなので記事の一部にモザイクを入れて掲載する。

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▲実在していた映画俳優やミュージシャン名にはモザイクをかけてある。

 今度はクローン人間の登場である。現実の世界ではありえないが妄想の世界ではクローン技術を使った産業が発達していて、既に新鮮味を失っている。

 

〔記事全文〕クローン人間製造の規制開始 2000年代から始まったクローン技術によるヒューマン型商材開発の規制緩和にともなうクローン商材の市場への供給過多が指摘されて久しいが、このほど政府では国連決議に基づき時限立法による規制に踏み切った。商材の人権の是非を問う クローン商材の市場における進出の第二期は2011年の東日本大震災以降の被災地の復旧作業に伴う瓦礫処理や〇〇県内の放射性物資除染作業、〇〇第一原子力発電所廃炉作業など被曝等の危険な作業に投入されてきたが、本来の芸能業務とは異なる商材の使用方法にあらためてクローン人間に対する人権問題提起が市民運動家を中心に再燃し始めている。「線量の高い場所での作業は、電力会社の制服組の指示でクローンが入れられていました。われわれ下請の者は管理棟のなかにいて無線でクローンに指示して作業させています。クローンは人間とほとんど同じですから金属ロボットとちがって便利ですよ。自分の意志を持たず可動期限が製造メーカーで10年に決められているのをのぞけば、ほんとうの人間と変りません。でも、作業現場で同じ顔ばかりが並んでいるのは異様です」と作業監督の早川真治さん(45)はいう。市場で供給過多に 規制緩和当初では、第一世代型クローンの〇〇〇〇・〇〇〇〇や〇〇〇〇〇・〇〇〇〇〇が世界で初めてクローン化され稼働し、第二世代では〇〇〇・〇〇〇、〇〇〇〇・〇〇〇〇〇等のミュージシャンが出た。次第にマニアックでジャンルが細分化され、ジャズミュージシャンの〇〇〇〇・〇〇〇〇、〇〇〇・〇〇〇〇〇〇や〇〇〇〇〇・〇〇〇〇〇、〇〇・〇〇〇〇〇〇〇など欧米主導のクローン化が推進され往年のハ〇〇ッドスターたちも量産された。しかし、現在では全世界的にクローン商材は供給過多になり東〇ドームや日本武〇館等の大型会場でのコンサート開催頻度は減少し、地方の小劇場やライブハウス、キャバレー、また性風俗業界、AV業界への進出が問題化している。

 

 それから、クローン技術を使えば当然こんなものが出てくる。 

 

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▲これは空想の新聞広告の切抜きである。東京〇ームで〇〇〇〇・〇〇〇〇〇のコンサートが見られる。

 

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 ▲世界的な超大物4人組のクローン人間によるコンサート開催である。

 

 それから、こんな事件も起きる。

 

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▲世界的に有名なセクシー女優の、この記事もあらゆる問題を孕んでいる。(空想の産物である)

 また、クローンと言っても人間仕様であるので、問題行動を起こす者や事件事故に巻き込まれる者も出てくる。

 

〔記事全文〕二十六日、〇〇県〇〇市〇町のストリップ劇場「ぎおん」において同店店長の脇坂昭三(53)と女性ダンサー6名、〇〇〇〇・〇〇〇〇型のクローン人間〈製造番号M-0479〉が公然猥褻容疑で〇〇〇警察署の捜査一課によって逮捕された。調べによると「ぎおん」では昨年十一月頃より特出しサービスと銘打って〇〇〇を来店客に拡大鏡で観察させ不正な利益四五〇万円余りを上げていた。なお、今回の事案に対してクローン人間による公然猥褻罪立件の是非が議論呼びそうだ。経済産業省ではクローン人間の非行率の増加にともないクローン人間犯罪防止対策室を設けることを検討している。

 

  また、別の味わいの物をひとつ、

 

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▲新聞広告の体裁で、「憧れの宇宙にお墓」である。これは実際にあった広告を模していて「宇宙」は「赤坂」とあるのを入れ替えた。

 

 それから、またUFOものを掲載する。いささか記事の内容がマンネリになってきたが大見出しを刷ると気持ちがいい。

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阿佐ヶ谷駅上空にUFOが出現である。

 

〔記事全文〕二十八日、午前十一時頃、杉並区 阿佐ヶ谷駅の 上空30メートル の空間に、突如銀色に輝くUFO( 未確認飛行物体 )が出現して駅周辺を行き交う多数の人々に目撃された。UFOは駅上空に浮遊したまま 30分ほど停止し、やがてUFOの底部からひと筋のオレンジ色の光線を線路にむけて照射して、高速でジグザグに上昇してゆき、百メートル上空で突然消えていった。なお、線路を管理するJ〇東日本路線管理部の谷川俊介さん(41) によると「レール等の列車の運行に関して問題になる箇所はありませんでした。ただ、光線を照射されたと思われる高架のコンクリート面がキラキラと輝いているのが変化と言えば変化と言えます。勿論、コンクリートの強度に関して問題ないと判断しています」という。敵か? 味方か?UFO等の超科学的事象に詳しい全日本超常現象研究所所長の竹本総一郎氏は、「UFOの出現の目的は従来から地球外の宇宙人の宇宙船もしくは未来人が調査または観光で来るタイムマシン説が有力視されていましたが、ここにきて新説の異次元空間説が 提唱され、学会では主論となりつつあります。本来、異次元空間は、この今の世界とほとんど同一のパラレルワールドですが、何百億、何千億と無限にある世界では、多少の相違点が無限の複写により大きな違いとなって現れ、われわれの知る世界とはかけ離れた文明世界となって、そこからUFOが飛来しているのではないかと考えられました。ですからUFOは敵対的ではなく、高度な科学を持ちながらわれわれを攻撃してこないのは、われわれと同一のパラレルワールドの住民であるからなのです。それから、地球外の宇宙人説は、生き物の強者が弱者を捕食する生物の生存本能の観点から低いと考えられす。もっとも、人類が神の存在を夢見るように、神のような存在があれば別ですが」という。

 

 そして、今度は、

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 巨大アンモナイト化石の発見!!である。これほど大きな物はなかなか発見されていないが、実在すれば素晴らしい。

 

〔記事全文〕先月15日、木曽駒ヶ岳山頂で巨大なアンモナイトの化石を登山者の柳原伸介さん(46)たちが発見した。駒ヶ岳山頂の不思議「私たちは二人で山頂を目指している途中に、濃い霧になって道に迷いました。一本道のはずでしたが、いつもとちがう所に出て、山頂で巨大なアンモナイトの化石をみつけました。いやぁ、ふたりで驚きました。この世のものとは思えず、記念に写真と携帯電話で動画を撮りました。・・・霧が晴れて無事下山して、後日、気になってまた同じ所を目指して登りましたが、どうしてもアンモナイトの所に辿り着きません。あれは本当にあった物なのか、夢、幻だったのでしょうか」と柳原さんはいう。この化石は、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州から出土した白亜紀後期のアンモナイト、パラプゾシア・セッペンラデンシスを思わせるもので、最大幅5メートル、推定重量20トン余り。

 

【注意】上記の新聞記事は一切架空のもので、登場する団体名、人物名はフィクションです。

 

  ・・・・・つづく。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。木版漫画集「黒猫堂商店の一夜」(青林工藝舎)を刊行。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

 

 

 

 

第14回 与太記事スクラップ

                                                               はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

        ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回のアートは、新聞記事を模した記事を印刷してみようと思う。しかも記事の内容は架空の、超常現象のような、ちょっと他では見かけない物にして遊んでみたい。(ゆくゆくはスクラップブック一杯に与太記事を貼りつけてみたい) 以前、藤宮新聞をやって取材範囲が狭くて頓挫しているので、今回は大上段に構えずに、幅広い取材対象にして単発で記事を作ってゆきたいと思う。

 ■実際につくってみる

 まずは記事の下書きとして、コピー用紙に鉛筆で草案と、印刷する新聞記事のレイアウトを描いてみる。たのしい割に費用が掛らずに私向きである。

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▲コピー用紙の上部にレイアウト、下部に記事の草案がある。

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▲昔ながらの切り貼りで版下製作をしている。

 

 写真はデジタルカメラを使い、この記事のロケハンは近所の暗渠でおこなった。

 出来上がった版下をリソグラフ印刷機にかけてワラ半紙に印刷。(印刷費用は4種類の記事を作って計100円である)

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▲刷り上がった新聞記事をスクラップする要領でハサミで切ってゆく。

 

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▲本物の新聞のように折り目をつけ、手で揉んで皺をつけると本物の新聞記事と判別できづらい仕上がりになった。

〔記事全文〕一月十一日、早朝に面妖な者の姿が目撃された。杉並区下井草一丁目に在住の杉原涼子さん(43)によると、「朝の五時半頃にゴミ出しにゆくと、暗渠になっている路地のところを笠を被った小柄の着物姿のオジさんが手桶を片手に持って、こちらに歩いてくるな、と思いました。ええ、最初はオジさんだと思っていましたが、近づいてくると、口に魚をくわえていて、口許も人のようではなしに犬のように尖っていて顔一面に短い毛が生えているようでした。ええ、あれは人間ではありません。怖い、という気持ちもありましたが、咄嗟にスマホのカメラで撮影しました。でも、写真を撮ると、すぐに、フッと目のまえで消えてしまって・・・」と、戸惑いながらも当時の様子を克明に話してくれた。日本妖怪研究所所長 山岸精二氏によると、これは狐狸、貂と共に人を化かすと言われる獺の妖怪ではないかということである。

 

 上記の要領で、次々と与太記事を作ってゆくと、

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▲このように、東京では妖怪が出現していることになり、

 

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 じゃんじゃん妖怪が跋扈している東京の杉並区である。

 

 そして、とうとう、

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 ネッシーが登場である。

 特撮写真のような仕上がりであるが、これはフォトショップで画像を合成して作った。

 上記の記事はすべてフォトショップの画像処理であるが、ネッシーは金属製の置物(長さ20センチ程)を撮影し公園の画像に合成した。妖怪ものは、妖怪のフィギュア(5センチ~8センチ程)を使用して撮影し、合成した。

〔記事全文〕十四日、早朝の妙正寺公園(杉並区)の池にネッシーを連想させる怪獣が出現した。公園内でラジオ体操のグループに参加していた中沢君子さん(72)の話では「怪獣は、はじめに池の中に潜った影で現れて、それから頭を出し、長い首を伸ばして辺りを窺って、それから背中を出した格好になった。しかし、怪獣が現れたのに、怪獣のまわりにいた水鳥たちは怪獣に気がつかないようすで静かに水に浮かんで遊んでいた。そして、怪獣はゆっくりと首を動かして、ふっ、と忽然と姿がきえてしまった」という。この怪獣の出現の目撃者は複数の方がいて各々携帯電話のカメラで撮影をしていた。未確認生物に詳しい全日本超常現象研究所所長の竹本総一郎氏によると、この怪獣は恐竜時代に栄えた大型水棲爬虫類である首長竜プレシオサウルスに酷似しており、その恐竜がなんらかの超常現象で姿を現し、そして、消えたのではないか、とのことであった。尚、恐竜の体長は約5メートル、イカなどの軟体動物を捕食していたと考えられている。

 

 ・・・しかし、ここで記事の出来栄え(レイアウトなど)が気になりだした。もうすこし、良いものが出来るのではと思い、再度作ってみた。

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▲大見出しを工夫してスクリーントーンを久しぶりで貼った。また妖怪の画像を鮮明にして、記事の文字の字間、行間を詰めて本物の新聞の体裁と同じにしてみた。

 

〔記事全文〕一月四日、午後三時頃、突如、東京都杉並区の阿佐ヶ谷上空に未確認の浮遊物体が雷の音のような、または貨物列車が走り抜ける音を間近で聞くような音を出しながら現れ、当地の住民、新井佳子(51)さんら複数の住民が目撃した。浮遊物体は若干左右に揺れていたが約一時間ほど上空に留まって、その後、数秒間のうちに音もなく姿が薄く消えていったという。尚、新井さんが携帯電話のカメラで撮影した画像を国立超科学研究所所長斎藤正彦氏に鑑定を依頼した結果、浮遊物体はプラズマや火球などではなく江戸時代の文献「諸国百物語 巻一」にある片輪車に酷似しているとのことであった。怪談集〔諸国百物語〕一六七七年(延宝五年)全5巻、各20話、全百話の巻一には「京東洞院かたわ車の事」の記述があり、京都の東洞院通りには毎晩のように牛車の片輪に凄まじい形相の男の顔が貼りついて転がって人人を恐れさせたという。

 

 上に掲載してある記事と見比べてください。随分よくなったと思います。

 

 そして、また、

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▲本物に新聞に近づけようと皺を入れたが、スキャナーの精度が良くて皺をひろいすぎである。

 

この記事も作り替えてみた。大まかなところは一緒だが、やはり文字の字間行間を詰めて、見出しの文字も大き目のもの、また大ネズミの画像もより鮮明なものに替えてみた。

 

〔記事全文〕一月六日、午前六時ごろ、四日に続き、今度は着物姿の人の背丈ほどもある大ネズミを都内杉並区阿佐ヶ谷北二丁目の暁マンションの屋上で、当マンション在住の木村重徳さん(72)が発見した。大ネズミはマンションの屋上のへりを約10分間ほど駈けるように身軽に移動してゆき、やがて空中に飛び上がった恰好で姿が消えていったという。日本妖怪研究所所長 岸本精二氏によると、これは妖怪画集「画図百鬼夜行鳥山石燕著の「鉄鼠(てっそ)」に似ているとのことで、また他に、同種異名として「平家物語」の「延慶本」では「頼豪鼠(らいごうねずみ)」、また狂歌絵本「狂歌百物語」では「三井寺鼠(みいでらねずみ)」と言うとのことである。

 

 それから、趣向をかえて、新しい記事をひとつ、

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「タイムマシン製造開始」という記事である。事実であれば世界的なニュースであるが、これは架空の記事である。

 

〔記事全文〕16日、〇州原子核研究機構のマイケル・マクレガー教授(宇宙物理学)率いるグループがタイムトラベルに必要なポアンカレM理論を完成させタイムマシンの試作機製造に着手した。試作機の完成は二〇二一年の予定。■タイムマシン/二〇〇〇年にインターネット上に現れた自称タイムトラベラーのジョン・〇〇ターが残していったとされる亜空間理論に関する資料により飛躍的に時間遡航術が発展。二〇〇八年、同教授グループによりタイムトラベル理論が完成した。

 

 また、もうひとつ掲載すると、

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 なんと、こんどは警察官2名が何者かによって白昼蒸発させられるという怪奇事件が発生した。きっと、何者かは未来人で、特殊な器具によって警察官は転送されてしまった。(これは虚構です)

 

〔記事全文〕16日、高円寺南4丁目の交差点で人身事故処理にあたっていた高村雅晴巡査長(36)と笹山昭人巡査(24)が、事故 で負傷して倒れていた男性に光線のようなものを浴びせられて、群衆の見守るなか忽然と消えた。なお、その現場を目撃した通行人たちの証言によると「 男は、スマートフォンのような小さな器具を警察官たちに向け、次の瞬間、警察官たちは音もなく、軀の影が薄くなって消えた 」という。また、男の行方については、気がつくと姿が見えなくなった、とのことである。(これは虚構です)

 

 そして、いよいよ今度は、

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UFO(未確認飛行物体)の登場である。やたらと杉並区ばかりに妖怪やらネッシーやらが出現しているが、ただ単に筆者が杉並区在住だからである。

 

  それから、ようやくコクヨのスクラップブックを阿佐ヶ谷の文房具屋で調達できた。A3サイズの物が税込820円である。A3サイズだと大きいような気もするが、実際、新聞記事を貼るにはこのサイズが必要である。

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▲(株)トンボ鉛筆のスティック糊「シワなしPITS」を使うと快適に記事を貼ることができる。

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 まだまだスクラップは始めたばかりなのでページがスカスカで淋しいが、一年間順調に作ってゆけば充実するだろう。

 

 この第14回のブログは1月15日掲載の体裁であるが、実際はその後日にもポロポロと掲載している。この下の記事も先程(22日午後1時頃)印刷してきたので載せてみたい。

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「地底人の来訪はじまる」である。地球は、日本はどんなことになっているのやら、である。あまりに荒唐無稽すぎるが、たのしいので、このままゆく。

 

〔記事全文〕20日早朝、都内杉並区の馬橋公園内の積雪の下より地底人と思われる複数の異形の者たちを、公園内を散歩していた男性(71)が目撃した。男性の証言によると「 白く光る雪の上を 30センチぐらいの黒いものが雪の下から次つぎに這いあがってくるじゃないですか、驚いたのなんのって、もう、夢中で携帯電話のカメラで撮影しましたが、それらは、10も20も出てきて、そして、一列になって雪の上を林の奥に消えてゆきました 」という。なお、地底人に詳しい日本地底科学研究所所長 坪井忠輔氏によると、今回目撃されたタイプの地底人はAⅡ型の比較的地上から浅いところに分布している者たちで、温厚な性格、人間にたいして友好的とのことである。また、従来から指摘されてきた地底人の難民認定の難しさにたいして政府の対応が注目される。

 

・・・それから、また、これは与太記事らしくないが、こんなものをひとつ。

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 ありそうで無かったので、自分で作ってみた。新聞の書籍広告のようにしてみた。

・・・そして、今度は、

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 新聞の作家紹介欄「今週の人」コーナーに掲載である。スクラップブックに貼るのに必要なので作ってみた。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

第13回 マイクロ・バカンス

                 はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

              ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回のアートは、バカンス気分でゆきたい。バカンスといえば別荘である。現実の、別荘暮らしは、夢のまた夢状態であるので、おもちゃの、人形サイズの別荘にお邪魔する。

 ■実際につくってみる

 近所の模型店へ走り、別荘の素材を仕入れる。10㎜角の木材や2、3㎜厚の板を、部屋の壁、家具やフローリングの床板、小物の寸法に加工してゆく。

 画像だけ見ると、あっ、というまに別荘は出来あがったように見える。しかも、しばらく放置していたので、部屋は廃屋のようになっている。

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部屋全体に埃があつく積もり、蜘蛛も糸を張っていた。

 

 部屋の灯りをつけて、片付けをはじめる。

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標本箱、書籍の埃を取って掃除をする。

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部屋のあるバケツとモップを持ってくる。

 

 1時間ほど掃除をして、きれいに片付いた部屋でひと息いれる。

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出来たばかりの別荘なのに、もう何年も人が住んでいない雰囲気がある。

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窓外には白樺の林がひろがり、樹間からは青い空がのぞめる。

 

 しばらくすると、にわかに眠気を覚え、椅子に坐って昼寝をした。

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 夢をみているのだろう。私は別荘の部屋のなかで、眠っている私をよこで眺めていた。

 

 目がさめてから、裏山にゆき、光る鉱石をたくさん採取した。標本箱に収めて分類整理をする。

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光る鉱石は、隕石だと云われている。

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鉱石をつかって、天球儀のなかに人工の小宇宙をつくってみる。

 光る鉱石を砕いて、薄荷水のなかに漬け、その薄荷水を羽ペンの先につけて天球儀のなかに宇宙を描いてゆく。

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羽ペンの先からだんだん光りはじめる。

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天球儀のなかに小宇宙があらわれた。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

 

 

 

 

第12回 積むアート

                  はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

                  ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回は、また趣向をがらりと変えて、誰でも、どこでも、すぐにできるアートを提案してゆきたい。しかし、これから提案するものが、はたしてアート(芸術)かどうかは、わからない。そういえば、反芸術、非芸術もしくは、半芸術、駄芸術なる言葉があったことを思い出す。今回の提案は、そのどれにも該当しない感じもあるが、気にせずどしどしやってゆきたい。

  実際にやってみる

 まず、テーブルの上に10円硬貨を数枚用意して、テーブルの上に10円硬貨を1枚縦に立てる。

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よく見かける光景である。

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ちょっと、斜めから見たところ。

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真上から見ると、こんな感じである。

 

 次に、その立てた10円硬貨の上に、そっと別の10円硬貨をのせてみる。

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これは、わりあい簡単にできる。

 

 次が、なかなか難しい。

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これができれば、あとは同じことの繰り返しである。

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精神を統一すれば、不可能はない。

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だんだん調子がのってきた。

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いい調子である。このぶんでゆくと、10枚のせも夢ではない。

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もうひと息である。

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これだけ載せると、手がふるえてくる。

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やっと、9枚のせた。10枚は、ちょっと無理である。

 

 それから、また今度は10円硬貨を立体的に積んでゆきたい。まず、10円硬貨を数枚テーブルの上に用意する。

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そして、1枚づつ積んでゆく。

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慎重に、置く。

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やはり、むずかしい。

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しずかに、慎重に・・・。

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息がつまるようである。

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▲・・・・・ふぅ。

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さすがに、これは、ここで限界。気持ち斜めに傾いている。

 

 「積むアート」如何でしたでしょうか。これからも、いろいろと積んでゆきたいと思います。(これは洒落アート的なもので、ギネスに載るようなものではありません)

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

 

 

第11回 極私的新聞

                  はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

               ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回は、個人もしくは、その周辺で起きた瑣末な出来事を新聞記事として取りあげ、新聞として印刷、刊行するもので、出来あがり次第希望者にはもれなく郵送する。(82円切手同封の方のみ) もっとも、新聞といっても個人が発行するものなので、不定期刊行、記事が古くなるのは致し方ない。しかし、インターネットで手軽に個人的なブログが流行っている今日であるからこそ、紙に印刷して、わざわざ個人宅のポストに頼まれもせぬのに配達することに意味が発生するのか、どうかというところである。

  実際につくってみる

 B4サイズのコピー紙を用意して、新聞の版下をつくる。私の場合、いろいろな事情でパソコンで版下を作らずに、文章をプリンターで印刷して、それを切り貼りして版下を作ってゆく。版下がB4サイズなのは、リソグラフ簡易印刷機の印刷能力がB4サイズまでなので、安価に作ろうとすると、これが限界である。新聞の体裁のようにつくるので、大手新聞でいうと、途中で紙面が途切れている具合である。新聞名は、私の場合は、名前にしたが、微細な地域名にしたり、アパートの名前にしても面白い。

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大見出しに「ロト7はずれる !!」としたが、「はずれる」が良くないのでボツ原稿とする。また、「暗雲」もよろしくない。

 

 いろいろ考えたが、大見出しは猫のケンカである。

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赤猫のケンカの記事に決まったが事件の写真がない。

 新聞掲載予定の写真画像は、再現写真のため、猫の絵を段ボール紙に描いて作った。

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原寸大に猫の模型を作って、庭の地面に設置して撮影する。

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こんな感じの事件写真になる。

 

 それから、新聞に載せる広告をつくる。私の近著「蜘蛛の糸」芥川龍之介 原作の木版漫画の冊子(私家版)の広告である。木版画でつくるので、まず、ラフスケッチを描く。

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広告の寸法を決め、鉛筆で下描きをする。

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明朝体のような文字をフリーハンドで書き、ペンで清書する。

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トレーシングペーパーにペンで描き写し、反転。その反転した物のあいだにカーボン紙をはさみ、トレーシングペーパーの上から、またペンで描く。

 すると、ご覧のような版木ができる。

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版木には反転した画像が転写されている。これを彫刻刀で彫ってゆく。

 朴(ほう)の版木はやわらかいが、すこし筋がある。彫刻刀でほると、かくかくする。

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彫ったところからB6の鉛筆で描いてゆく。

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ここまで彫るのに1時間ぐらいかかる。

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だんだん木版画の雰囲気が出てきた。

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最後の山場、名前彫りである。一番ちいさな文字なので難しい。

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名前彫りは、拡大鏡をつかって彫った。ここ迄で2時間かかった。すべて彫るのに、計4時間はかかっている。

 製版が終ったら、次は印刷である。バレンをつかって手摺りをする。

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インクを刷毛でのせる。

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手漉きの和紙に摺った。この原画を縮小、若干の修正を加えて版下原稿をつくる。

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版画を複写して版下原稿に貼る。

 

【おしらせ】木版漫画「蜘蛛の糸」の広告木版画を販売いたします。

 

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▲木版、手彩色。ペーパーサイズ  約165×242㎜、サイン、落款入り。複数枚販売しますので、版画の刷り具合、手彩色の色合いが若干ちがいますが、ご了承ください。

〔特別頒価〕2500円(送料込み)

 

・・・・・・新聞づくりは、まだまだかなり長く、つづく。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。

第10回 版画生活

 

                  はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

                ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回は、アカデミックな版画づくりを提案してゆきたい。しかし、モチーフになるものは、薔薇の花や猫、美しい山河、美しい婦人像などではなく、日常生活でよく目にするもの、ありふれたものを作ってゆく。版画生活というタイトルにしたが、生活版画でもよかった。どちらかと云うと、日頃生活していて使っているものを版画にすると云うことで、生活版画のほうが気分として近い。また、技法としては、銅版のエッチング、ドライポイント、木版の板目版木をおもに使う。(今回の掲載する版画は過去30年間につくられたものです)

  ■実際につくってみた

 これは、私が阿佐ヶ谷の三畳ひと間のアパートに住んでいたときに作った単色木版画である。絵のモチーフは、その三畳間の窓から見える、路地を挟んで建つ同じような造りのアパートの、ところどころ錆びた雨戸に印刷されていたもので、その雨戸はただ塗装もないトタン板で造られ、トタン板の製作会社のトレードマークが雑で荒っぽいステンシル印刷でつけられていた。

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制作当時は、薄い青色の陶器を包む緩衝材の紙であったが、ご覧のとおり今は色褪せている。木版画で象と数字、英字を墨で刷ってある。

 

 次は、いわしの油漬け缶詰の包装紙である。刷りの工程がたいへんで、1枚だけ刷って終わりにしてしまった。

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RED ROSEという缶詰らしい。木版多色刷り(3版)に銅版(エッチング)でつくってある。

 

 そして、粉薬の袋である。薬は、このとおり青色のもので、ビニールの小さな袋にパックされていた。この版画は、銅版(エッチング)で2版、木版で2版、計4版で作られている。

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 ▲23歳のとき、胃腸病を患って処方された薬である。

 

 また、こんな物も作った。これは切手シートを模した銅版画(エッチング)である。木版も併用している。「藝術雜誌發行」「創始十周年記念」と篆書で書かれてある。

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 ▲1銭5厘の切手を模している。

 

 19歳頃は、バーコードにこだわっていた。銅版技術が未熟で、製版も印刷も思いどおりにはいっていない。しかし、気持ちはこもっていた。

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 ▲版画作品の一部分である。

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こちらも、版画作品の一部分である。リプトンの紅茶のバーコードを参考にしている。

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強い腐蝕で版のふちが削れている。

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こちらも銅版画(エッチング)である。

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透明水彩絵具をつかい木版で刷ってある。

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エッチングで製版した銅版をつかいエンボスと鉛筆でバーコードを表現している。

 

 30年ほどまえ、雑誌に掲載されていたホテルの壁紙の模様を木口木版でつくってみた。不透明水彩絵具使用なので印刷がうまくゆかず不鮮明である。

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版を彫るのにビュラン(西洋彫刻刀)で2週間かかった。

 

  また、これは布地の柄を模写したもので銅版(エッチング)で印刷してある。

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ふたつの布柄のイメージを組み合わせてつくっている。

 

 それから、新聞の天気図にこだわっていたときがあった。

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エッチングの味わいを気にしながら絵をつくっている。

 

また、版画ではないが、こんなものを作ってみた。木彫にニスが塗ってある。

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今では白熱電球は旧時代的であるが、昔はこれしかなかった。

 生活の、日用品に目をむけてみると、思いがけず美しいと感じることがある。それらの、そのときどきを版画に定着してみた。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。