藤宮史の二番煎じなアートな気分

手軽で笑える現代美術的なことをやって、不定期に掲載します。

第15回 与太記事スクラップ②

                 はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

        ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 今回のアートは、新聞記事を模した記事を印刷してみようと思う。しかも記事の内容は架空の、超常現象のような、ちょっと他では見かけない物にして遊んでみたい。(ゆくゆくはスクラップブック一杯に与太記事を貼りつけてみたい) 以前、藤宮新聞をやって取材範囲が狭くて頓挫しているので、今回は大上段に構えずに、幅広い取材対象にして単発で記事を作ってゆきたいと思う。

 ■実際につくってみる

 前回の続きである。今回は取材範囲をさらに拡大してゆきたい。

 クローン人間ものの記事を用意したが、実在した有名俳優、歌手などで差しさわりがありそうなので記事の一部にモザイクを入れて掲載する。

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▲実在していた映画俳優やミュージシャン名にはモザイクをかけてある。

 今度はクローン人間の登場である。現実の世界ではありえないが妄想の世界ではクローン技術を使った産業が発達していて、既に新鮮味を失っている。

 

〔記事全文〕クローン人間製造の規制開始 2000年代から始まったクローン技術によるヒューマン型商材開発の規制緩和にともなうクローン商材の市場への供給過多が指摘されて久しいが、このほど政府では国連決議に基づき時限立法による規制に踏み切った。商材の人権の是非を問う クローン商材の市場における進出の第二期は2011年の東日本大震災以降の被災地の復旧作業に伴う瓦礫処理や〇〇県内の放射性物資除染作業、〇〇第一原子力発電所廃炉作業など被曝等の危険な作業に投入されてきたが、本来の芸能業務とは異なる商材の使用方法にあらためてクローン人間に対する人権問題提起が市民運動家を中心に再燃し始めている。「線量の高い場所での作業は、電力会社の制服組の指示でクローンが入れられていました。われわれ下請の者は管理棟のなかにいて無線でクローンに指示して作業させています。クローンは人間とほとんど同じですから金属ロボットとちがって便利ですよ。自分の意志を持たず可動期限が製造メーカーで10年に決められているのをのぞけば、ほんとうの人間と変りません。でも、作業現場で同じ顔ばかりが並んでいるのは異様です」と作業監督の早川真治さん(45)はいう。市場で供給過多に 規制緩和当初では、第一世代型クローンの〇〇〇〇・〇〇〇〇や〇〇〇〇〇・〇〇〇〇〇が世界で初めてクローン化され稼働し、第二世代では〇〇〇・〇〇〇、〇〇〇〇・〇〇〇〇〇等のミュージシャンが出た。次第にマニアックでジャンルが細分化され、ジャズミュージシャンの〇〇〇〇・〇〇〇〇、〇〇〇・〇〇〇〇〇〇や〇〇〇〇〇・〇〇〇〇〇、〇〇・〇〇〇〇〇〇〇など欧米主導のクローン化が推進され往年のハ〇〇ッドスターたちも量産された。しかし、現在では全世界的にクローン商材は供給過多になり東〇ドームや日本武〇館等の大型会場でのコンサート開催頻度は減少し、地方の小劇場やライブハウス、キャバレー、また性風俗業界、AV業界への進出が問題化している。

 

 それから、クローン技術を使えば当然こんなものが出てくる。 

 

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▲これは空想の新聞広告の切抜きである。東京〇ームで〇〇〇〇・〇〇〇〇〇のコンサートが見られる。

 

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 ▲世界的な超大物4人組のクローン人間によるコンサート開催である。

 

 それから、こんな事件も起きる。

 

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▲世界的に有名なセクシー女優の、この記事もあらゆる問題を孕んでいる。(空想の産物である)

 また、クローンと言っても人間仕様であるので、問題行動を起こす者や事件事故に巻き込まれる者も出てくる。

 

〔記事全文〕二十六日、〇〇県〇〇市〇町のストリップ劇場「ぎおん」において同店店長の脇坂昭三(53)と女性ダンサー6名、〇〇〇〇・〇〇〇〇型のクローン人間〈製造番号M-0479〉が公然猥褻容疑で〇〇〇警察署の捜査一課によって逮捕された。調べによると「ぎおん」では昨年十一月頃より特出しサービスと銘打って〇〇〇を来店客に拡大鏡で観察させ不正な利益四五〇万円余りを上げていた。なお、今回の事案に対してクローン人間による公然猥褻罪立件の是非が議論呼びそうだ。経済産業省ではクローン人間の非行率の増加にともないクローン人間犯罪防止対策室を設けることを検討している。

 

  また、別の味わいの物をひとつ、

 

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▲新聞広告の体裁で、「憧れの宇宙にお墓」である。これは実際にあった広告を模していて「宇宙」は「赤坂」とあるのを入れ替えた。

 

 それから、またUFOものを掲載する。いささか記事の内容がマンネリになってきたが大見出しを刷ると気持ちがいい。

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阿佐ヶ谷駅上空にUFOが出現である。

 

〔記事全文〕二十八日、午前十一時頃、杉並区 阿佐ヶ谷駅の 上空30メートル の空間に、突如銀色に輝くUFO( 未確認飛行物体 )が出現して駅周辺を行き交う多数の人々に目撃された。UFOは駅上空に浮遊したまま 30分ほど停止し、やがてUFOの底部からひと筋のオレンジ色の光線を線路にむけて照射して、高速でジグザグに上昇してゆき、百メートル上空で突然消えていった。なお、線路を管理するJ〇東日本路線管理部の谷川俊介さん(41) によると「レール等の列車の運行に関して問題になる箇所はありませんでした。ただ、光線を照射されたと思われる高架のコンクリート面がキラキラと輝いているのが変化と言えば変化と言えます。勿論、コンクリートの強度に関して問題ないと判断しています」という。敵か? 味方か?UFO等の超科学的事象に詳しい全日本超常現象研究所所長の竹本総一郎氏は、「UFOの出現の目的は従来から地球外の宇宙人の宇宙船もしくは未来人が調査または観光で来るタイムマシン説が有力視されていましたが、ここにきて新説の異次元空間説が 提唱され、学会では主論となりつつあります。本来、異次元空間は、この今の世界とほとんど同一のパラレルワールドですが、何百億、何千億と無限にある世界では、多少の相違点が無限の複写により大きな違いとなって現れ、われわれの知る世界とはかけ離れた文明世界となって、そこからUFOが飛来しているのではないかと考えられました。ですからUFOは敵対的ではなく、高度な科学を持ちながらわれわれを攻撃してこないのは、われわれと同一のパラレルワールドの住民であるからなのです。それから、地球外の宇宙人説は、生き物の強者が弱者を捕食する生物の生存本能の観点から低いと考えられす。もっとも、人類が神の存在を夢見るように、神のような存在があれば別ですが」という。

 

 そして、今度は、

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 巨大アンモナイト化石の発見!!である。これほど大きな物はなかなか発見されていないが、実在すれば素晴らしい。

 

〔記事全文〕先月15日、木曽駒ヶ岳山頂で巨大なアンモナイトの化石を登山者の柳原伸介さん(46)たちが発見した。駒ヶ岳山頂の不思議「私たちは二人で山頂を目指している途中に、濃い霧になって道に迷いました。一本道のはずでしたが、いつもとちがう所に出て、山頂で巨大なアンモナイトの化石をみつけました。いやぁ、ふたりで驚きました。この世のものとは思えず、記念に写真と携帯電話で動画を撮りました。・・・霧が晴れて無事下山して、後日、気になってまた同じ所を目指して登りましたが、どうしてもアンモナイトの所に辿り着きません。あれは本当にあった物なのか、夢、幻だったのでしょうか」と柳原さんはいう。この化石は、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州から出土した白亜紀後期のアンモナイト、パラプゾシア・セッペンラデンシスを思わせるもので、最大幅5メートル、推定重量20トン余り。

 

【注意】上記の新聞記事は一切架空のもので、登場する団体名、人物名はフィクションです。

 

  ・・・・・つづく。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。木版漫画集「黒猫堂商店の一夜」(青林工藝舎)を刊行。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。