藤宮史の二番煎じなアートな気分

手軽で笑える現代美術的なことをやって、不定期に掲載します。

第5回 1円玉応援団

                  はじめに

 ここ15年ほどの私の創作活動は、猫の木版画制作や木版漫画制作がおもな仕事になっていた。しかし、これからは現代美術的な匂いのする「藤宮史の二番煎じなアートな気分」もときどきやりながら版画制作もやってゆきたいと思う。

               ✤✤✤ 今回の提案 ✤✤✤

 現行の1円アルミ貨が発行されて今年で60年目になる。現在流通している500円、100円、50円、10円、5円硬貨にくらべ、一番小さく、一番軽量である。そして、時代と共に物価は上がり、1円硬貨の価値は下がり続けている。普段、気にもとめない1円玉であるが、今回は社会の底のほうで頑張っている1円玉を大いに顕彰してゆきたい。

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【1円アルミ貨】直径20㎜、厚さ1.5㎜、品位アルミニウム100%、量目1.00g、発行枚数 441億1984万9000枚(2012年までの総数)

  1円玉エンボス版画

 1円硬貨へのオマージュとして、1円硬貨の拡大模型を型押しの版画(エンボス)、手彩色(銀色アクリル絵具)でつくってみる。

 ■実際につくってみる

 わが家には、手ごろな作業場がないので、いつでも炬燵の上が大活躍である。

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炬燵の上は、鉄工場のような具合になってきた。

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1円のデザインのパーツを0.5㎜厚のアルミニウムの板でつくってゆく。手回しドリルで形を切り出してゆくのに時間が掛る。

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ときおり、手をやすめながら作業を続ける。

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1円玉エンボス版画の原版完成である。

 画像を見ると、いきなり完成したようにみえるが、実際の作業は困難をきわめた。とくに「平成二十五年」の年号をドリルで穴をあけ、文字の内側を鉄ヤスリで削りだす作業はたいへんであった。

 版画プレス機でエンボス版画を刷ってゆく。しかし、刷るといっても版にインクを載せない空刷りである。そして、空刷りしたエンボス版画に、筆を使ってアクリル絵具(銀色)で着彩してゆく。

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二度塗り、三度塗りして作ってゆく。

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複数の版画の色塗りを一度にやってゆく。

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活版印刷で「ひとつでは非力だが社会にとって不可欠である」を刷ってみた。

 

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B4サイズのエンボス版画が完成した。

 大いに1円玉を顕彰したが、ついでに0円玉のエンボス版画をつくってみた。

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0円玉版画というのは、赤瀬川原平氏制作の零円札にたいするオマージュでもある。

 

・・・・・まだまだ、1円玉への応援はつづく。

 

 

藤宮史 (フジミヤ フヒト)

1964年生まれ 版画家、漫画家

 平成17年(2005年)第7回アックスマンガ新人賞を受賞する。また第12回、13回、17回の文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出される。1999年から2002年の三年間、漫画家の永島慎二氏の銅版画制作の助手をつとめる。